少年院を出所した若者を教育・更生させ犯罪の無い社会を目指す元ヤクザの敏腕社長

第三回目の対談ゲストは、株式会社良心塾の代表取締役、黒川洋司さん。

黒川洋司さん(以降、黒川社長と記す)は大阪市内に美容室3店舗を経営する傍ら、少年院・刑務所を出所後の若者の教育や自立を支援する施設「良心塾」を運営している。

常に笑顔を絶やさない品のある佇まいで、いかにも敏腕経営者という雰囲気が感じ取れる黒川社長。しかし、そんな黒川社長も若いころは非行に走り、悪さばかりしていたのだと云う。

黒川社長と吉本の出会いは、稲盛和夫氏を塾長とする経営塾、「盛和塾」で共通の知人を介して知り合う。吉本は黒川社長の生い立ちと自立支援活動に感銘し、今回の対談をオファーする運びとなった。

不良から経営者になるまで

黒川社長は昭和46年11月28日生まれの48才。

幼少期から非行に走り、15才で暴走族に入る。19才で反社会的組織、所謂ヤクザの道に入り、覚せい剤にも手を出したと云う。21才の時に足を洗うことを決意。以降はいくつかの仕事にも就いたが長続きはせず、堅気になってからも悪事を働くこともあり、裏社会の仕事をすることもしばしば。

転機が訪れるのは28才の時。結婚である。家庭を持ち子供を授かったことで、マトモな人生を歩むことを志す。人に雇われることは向いていないと考えていた黒川社長は友人と建設会社を興し生計を立てていたが、知人に美容師がおり、「これは儲かる」と思うとすぐさま知人と一緒に美容室を経営し始める。黒川社長は美容師免許を持っていないため、トイレ掃除やフロアなどの裏方仕事やマーケティングに専念。そんな中、お客さんからの「ありがとう」という言葉に美容室経営の楽しさを覚えたとのこと。

経営は軌道に乗り、2号店を出店すると更に大躍進し、「最も儲かった」と黒川社長が話す時期(当時33才)は、1日に50名のお客さんを断るほど大忙しだったと云う。

その後3号店もオープンし、会社経営は順調の真っ只中にあった黒川社長であるが、35才の時に母親が59才で他界。母子家庭で育った黒川社長は親孝行と言えることは今までしてこなく、むしろ親不孝ばかりしていた。それでも息子を愛し続け、優しい言葉を掛け続けてくれた母に対し、「このままじゃアカン。残りの人生、考え方を変えてマトモに生きよう」と決心する。それまでは漫画しか読んでこなかったが、1冊の本と出会うことになる。それが稲盛和夫氏の「生き方」である。稲盛和夫氏の利他的思考や社会や従業員のことを大切にする考えに衝撃を受け、すぐさま稲盛和夫氏を塾長とする経営塾、「盛和塾」に入塾し、改めて経営者としての勉強を始める。

良心塾を始めるキッカケ

さらに、黒川社長は運命的な出会いを迎えることになる。それが、お好み焼き屋「千房」を経営する中井会長であった。友人が参加する予定だった中井会長の講演会にたまたま同席し、その講演会で千房が元受刑者の雇用活動を行っていることを知り、思わず講演会後に感銘を受けたことを伝えに行き名刺交換をしたと云う。

すると1週間後に中井会長から、「もうすぐ再犯防止を目的とした官民合同のプロジェクトが始まる。君も参加しないか」と電話が掛かってきた。これが「職親(しょくしん)プロジェクト」で、黒川社長が良心塾を開くキッカケとなる。

職親プロジェクトとは、2013年2月に発足した法務省・日本財団・民間企業が一体となり、刑務所出所者、少年院出院者一人ひとりが更生できるよう雇用を促し、再犯率低下の実現を目指すプロジェクトのことである。最初は「千房」や串カツ「だるま」など7社からスタートしたが、「〇〇君が急に居なくなりました」、「〇〇君が売上金を持って逃げた」などの報告が相次いだと云う。今まで悪(ワル)を間近で見てきた黒川社長は、「単に元受刑者を雇用するだけでは失敗に終わる。元受刑者の教育から始める施設が必要だ」と考え、市営団地を借り、良心塾と名付け雇用した少年院出院者などを住ませて近所の掃除やボランティア活動など、仕事以外のことにも親身になって教え込んだ。

この活動が職親プロジェクトには必要だと認識され、日本財団バックアップの元、株式会社良心塾が設立される。

本格的に良心塾が始まると同時に集まってきた少年院出院者たちは、黒川社長が予想していた悪(ワル)では無く、ほとんど全員が幼少期の大事な時期に親からの愛をもらっておらず、虐待や育児放棄を受けてきた子供ばかりだったと云う。

今、抱えている悩み

美容室の経営と良心塾の塾長という二足の草鞋を履くことはかなり難しいようで、現在は出所者の更生・教育に徹した「夜回り先生」的な活動が主になってきており、時間面や資金面で改めて経営の大変さを痛感していると云う。

また、ある程度人生経験を積んでから刑務所に入ってしまった20代後半の若者は仕事でも即戦力になるが、少年院上がりの10代の子は精神的自立と社会的自立にかなりの労力が掛かることが現在の最大の課題になっているとのこと。

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