さらに、黒川社長は運命的な出会いを迎えることになる。それが、お好み焼き屋「千房」を経営する中井会長であった。友人が参加する予定だった中井会長の講演会にたまたま同席し、その講演会で千房が元受刑者の雇用活動を行っていることを知り、思わず講演会後に感銘を受けたことを伝えに行き名刺交換をしたと云う。
すると1週間後に中井会長から、「もうすぐ再犯防止を目的とした官民合同のプロジェクトが始まる。君も参加しないか」と電話が掛かってきた。これが「職親(しょくしん)プロジェクト」で、黒川社長が良心塾を開くキッカケとなる。
職親プロジェクトとは、2013年2月に発足した法務省・日本財団・民間企業が一体となり、刑務所出所者、少年院出院者一人ひとりが更生できるよう雇用を促し、再犯率低下の実現を目指すプロジェクトのことである。最初は「千房」や串カツ「だるま」など7社からスタートしたが、「〇〇君が急に居なくなりました」、「〇〇君が売上金を持って逃げた」などの報告が相次いだと云う。今まで悪(ワル)を間近で見てきた黒川社長は、「単に元受刑者を雇用するだけでは失敗に終わる。元受刑者の教育から始める施設が必要だ」と考え、市営団地を借り、良心塾と名付け雇用した少年院出院者などを住ませて近所の掃除やボランティア活動など、仕事以外のことにも親身になって教え込んだ。
この活動が職親プロジェクトには必要だと認識され、日本財団バックアップの元、株式会社良心塾が設立される。
本格的に良心塾が始まると同時に集まってきた少年院出院者たちは、黒川社長が予想していた悪(ワル)では無く、ほとんど全員が幼少期の大事な時期に親からの愛をもらっておらず、虐待や育児放棄を受けてきた子供ばかりだったと云う。